artzone

Archive

鬣くん、最近どんな絵を描いているの?

2014.8/6〜10

  • 140713_tategai_banner-01
  • 140713_tategai_banner-03
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13

展覧会概要

タイトル: 鬣くん、最近どんな絵を描いているの?

会期: 2014.8/6〜10

時間: 平日 13:00〜22:00 / 土日祝 12:30〜22:00

会場: ARTZONE

企画: 堤 拓也 (ARTZONE ディレクター)

5月28日

大学1回生の頃から付き合いがある鬣くん。
良い作品をつくったときも、とてつもなく悪い作品をつくったときも、
だいたい傍でみてきた。 でも近頃、2人とも大学を卒業して時間が経ち、
生活環境が変わったこともあり、鬣くんが何に興味があって、どんな絵を
描こうとしているのか、前ほどわからなくなった。

今回の『鬣くん、最近どんな絵を描いているの?』は鬣くんの絵の展覧会に
しようと思う。ARTZONEで、鬣くんと僕と作品の三者で話をしてみたい。

だがひょっとすると、もう絵なんて描いてないかもしれない。
たまにそういった不安が頭をよぎる。
もし彼が描かなくなったら、僕と鬣くんのあいだに横たわっているものは
なくなってしまうのだろうか?
キュレーターと、つくらなくなったアーティストとの関係はどうなるのだろう?

 

6月28日

久しぶりに鬣くんのアトリエを訪れる。
でも実は、1週間ほど前の鬣くんがいない間に、こそっと制作現場を
のぞいていた(なぜか僕は合鍵を持っている)。
やっぱり、会ったときに絵を描いていないことがわかったり、とてつもなく
悪い作品が置かれていたりしたら困る。
罪悪感を感じながらも、描いているなあと安心したかったのだ。

そんな先回りの確認があって、今日の打ち合わせがある。
作品はどうなっているか。 展示はどうするのか。 DMの写真はどうしよう。
ふわっとした話をする(鬣くんは展示直前になると、もっとふわっとした話をするだろう)。
絵については、正直、まだ少しぬるい感じがする。 筆を置くタイミングが
早すぎるのだ。 もう少し粘ればいいのにといつも思う。
昔一緒に展覧会をしたときに、とあるアーティストに言われていた言葉を
思い出す。 「鬣の絵は本当にわきが甘いなあ……」

……そのときに比べれば、多少エッジがあるかもしれない!
自分に無理矢理言い聞かす。 そういった思い込みが必要だと素直に認めよう。
だって、友人の絵を良く思いたいのはしょうがないじゃないか。

 

7月14日

鬣くんの絵を軽自動車のルーフに乗せて、とりあえず出発してみる。
目的は良い感じの場所。 それを背景に絵画を撮ろうというアイディアだ。
どちらが言い出したのかは覚えていない。

良い風景と言えども、鬣くんと僕が想像しているものは絶対に違うだろう。
設置の仕方も違う。 それぞれの意見を調整しつつ、京都の北を目指す。
鬣くんはこのあたりに来たことがないらしく、集落や大量の杉を見て興奮
ぎみだ。 運転している僕も楽しくなってくる。
深い森の中、イメージに合った撮影スポットめがけて、どんどん進んでいく。

けれども、どこで撮影すれば良いのかわからなくなってきた。
森を背景に、あるいは激流を背景に撮影できなくもないが、何かが違う。
7月中旬の蒸し暑さの中、ルーフから絵を降ろして、また結びつけてを繰り返す。
細い道でUターンし、来た道を戻るも、いざ車を止めてみると、案外良い風景ではないことに気がつく。

鬣くんの絵を乗せて、僕たちは一体どこへ向かっているのだろう?
アーティストとキュレーターの関係は、こんな感じなんだろうか?

 

8月27日

展覧会が終わって17日目。
たった5日間だけの展示というのは、写真では大したものとして残っていくのかもしれないけれど、意外と記憶の方ではあっさりした印象で留まっている。
一体、自分も含めどれくらいの人が鬣くんの作品のことを覚えているのだろう?

作品を公的に見せる「展覧会」という空間を良しとするのなら、展覧会を開催したキュレーターの功績は大きい。自分が見出した状況をみんなに説明をする際は、ほど良い優越感に浸れるだろう。でも、展覧会初日に鬣くんが口にした「なんか寂しい感じがするなあ…」という言葉は、人があまり観に来てくれないという単純な理由ではなくて、きっと鑑賞されることによって、自分と作品との間に他者性が生まれ、個人的な世界を理解するための世界との関わり方が、不意にずれてしまったからだと思う。
もし展覧会が始まる5日前あたりで、5日ほど会期がずれ込むことが決まって、それが永遠に続けば鬣くんは寂しい想いをしなくて済むかもしれない(そもそも、そんな不義理なことをしたら僕らの関係は終わる)。けれども、それでは鬣くんが公的な場で、アレントの言うような卓越を示すことはできない。多くの人に見られ、聞かれ、自由に判断し得ないものは、当然、人々の認知も記憶もない。

でもそんなものなくたって、世界との確固とした関係があれば生きていけるじゃないか、とも思う。むしろ、「公的領域=展覧会」自体が彼のその独特の方法論を奪い去っていくかもしれない。それによって、鬣くんは絵を描かなくなる可能性がある。世界との関係が切れる。
しかし、それは展覧会の性質なのか? いや、違う。正直に書くべきだ。もし彼なりの世界の理解の仕方、その総体を奪い取るとすれば、それはキュレーターによるだろう。つまり、僕の、彼を私的なところからパブリックに連れて来なければならない、という変な理屈によって、彼の意志が別のものにすり替わってしまうのだ。「作品をまっとうに見せたい」とか「僕しか彼を理解できない」とかが、結果的に個体差を悪い方向に持って行く。

そんな構造で考えたときに、僕と鬣くんの関係はどうなんだろう?

最後に会ったのは搬出のときだから、8月11日。それから会っていない。でも、一昨日用事でスタジオに立ち寄った際に、今から描こうとしている小さな円形のキャンバスが目の片隅に映っていたのを覚えている。

 

▼アウトライン
タイトル: 『鬣くん、最近どんな絵を描いてるの?』
出展作家: 鬣 恒太郎
会期: 2014年8月6日(水)~10日(日)〈全5日間〉
時間: 平日 13:00~22:00 土日祝 12:30~22:00
※2014年8月9日 19:00より、クロージングパーティ
場所: ARTZONE(河原町三条)

 

▼プロフィール
鬣 恒太郎 Kotaro TATEGAMI

1981 兵庫県生まれ
2011 京都造形芸術大学 情報デザイン学科先端アートコース 卒業
2013 京都造形芸術大学大学院 芸術表現専攻総合造形領域 修了

1981 Born in Hyogo Japan
2011 Kyoto University of Art & Design
2013 Kyoto University of Art & Design M.A

個展
2011 「+×÷』HOTEL ANTEROOM KYOTO Gallery 9.5(京都)

グループ展
2009 『kemono effect』0000 Gallery(京都)
2011 『Flowing Narrative Following Narrative』ARTZONE(京都)
2012 『Anteroom Project 』HOTEL ANTEROOM KYOTO(京都)
2013 『京都造形芸術大学大学院修了展』京都造形芸術大学(京都)
2013 『RADICAL SHOW』Shibuya Hikarie(東京)
2013 『AT PAPER. “09”』kara-s(京都)

その他
2010 「コレクション展目には見えない確かなこと/椿昇『エステティック・ポリューション』壁画制作」 金沢21世紀美術館(金沢)

 

Solo Exhibition
2011 “+×÷” HOTEL ANTEROOM KYOTO Gallery 9.5, Kyoto Japan

Group Exhibition
2009 “kemono effect” 0000 Gallery ,Kyoto Japan.
2011 “Flowing Narrative Following Narrative” ARTZONE, Kyoto Japan.
2012 “Anteroom Project” HOTEL ANTEROOM KYOTO, Kyoto Japan
2013 “Kyoto University of Art & Design M.A Completion Exhibition” Kyoto University of Art & Design, Kyoto Japan
2013 “RADICAL SHOW” Shibuya Hikarie, Tokyo Japan
2013 “AT PAPER.09” kara-s, Kyoto Japan

Other works
2010 “Collection Exhibition: Invisible Reality / Aesthetic pollution (TSUBAKI Noboru) Mural” 21st Century museum of Contemporary Art, Kanazawa, Kanazawa Japan

 

写真: 守屋友樹